朝方・表通り
[無愛想に斬りかかられてもおかしくなかったのだが、彼女はそうはしなかった
>>82。
フットマンが声をかけると、彼女は返事をした。
穏やかなご挨拶。だけど、それにしては物騒な雰囲気だ。
フットマンは背を向けたまま、彼女の“挨拶”を聞きながら、記憶の隅に引っかかる声の主を頭の中で探していた。
──だから、たぶん話を半分も聞いていなかったのだろう。]
……リリオのとこの小娘じゃねぇか。
[挨拶が終わり、切先が向けられたところで、フットマンは振り返ってそう言った。
──否、わかっている。リリオがこんな喧嘩に首を突っ込んでくるわけがない。
彼女はもはや、屍に揺れる白百合の娘ではないのだ。
数秒前の彼女の“挨拶”を思い返す。聞いてたのかお前。
──そうだ、「荼毘葬送オクリビちゃん」と言ったか。…オクリビちゃん?
一瞬、引っかかったのかフットマンは時差でやや怪訝な顔をしたけれど、すぐに何事もなかったかのように引っ込めた。]