[視線を再び前へ戻すと、素直にこくりと頷く。]
勝手にごめん。
あそこの窓から花が崩れてるのが見えて、帰りに気になっちゃって。
[結月はささやかな嘘を吐いた。
正しくは、"犯人"を見たことを口にしなかった。
それは悠然と歩き去った誰かを庇った訳ではなくて、
「目撃したのに放っておきました」と言うのが憚られたからだ。
指し示した窓はカーテンが閉まってよく分からない。
そのことに気づいて、「図書室」と付け加えた。]
でも、それだけしかしてないよ。
他には何も触ってない。
[まさか"犯人"が自首したなんて知らない目撃者は、
嘘を吐いたせいで生まれた自分が疑われる可能性に抗う。
だって、彼が話しかける理由が理解できなかった。
両手を上げて己の無害さをアピールする。]