……あのさ。いつもありがとね。[少女の声は決して大きなものではなかった。ぽつりと呟いて、また沈黙。耳元で母の声が聞こえる。] 別に何もないよ。今なら言えるかなって思っただけ。 え? 本当だって。テストが駄目だったとかない。[喉の奥でくつくつと笑う音。母の声に耳を傾ける間。呼吸。] うん。わたしは大丈夫。[力強くはなかったが、結月ははっきりと言葉にした。子どもみたいに遊ばせていた足を止める。]