……………そう、なの。
[ハリコは殺人者ではない。誰一人として、直接この手で殺したことはない。たとえバンドマン殺しだの、ライバル殺し未遂だの言われようとも。そんなこの囚人の感性は、この点においてあくまで“世間一般”の側。
事件の具体的な仔細についてまで聞いている訳ではなかったから、具体的な惨事のイメージを思い描けていた訳ではなかったが(それ故に、犠牲者のひとりに自分とのささやかな共通項>>0:379があったことも知らなかった)、それでもハリコの顔は左側まであからさまに凍り付いていた。声も。]
そうだったのね。
教えてくれて、ありがとう、ルミ。
[目の前の相手の正体を悟った“まとも”な女は、凍り付いてこわばった笑みで感謝を告げたきり、ルミから距離を取り、顔を背けた――当たり障りのない形で“ヤバいヤツ”から距離を取ろうとする世間の反応、そのものだった。
そしてハリコはそのまま、無言で交流スペースを後にした。
――追い縋られなくて良かった。
そんな風に心の内で思う己を省みながら、その日の自由時間は、独房に籠りきりになっていた。*]