[それからほんの少し遅れて、あの島に残っているだろう人々のことを思う。
噂のあの人らしき囚人を、この輸送船の中で見かけてはいない>>82。囚人を見る目ないハリコなりに善良に見えた、表立って名前を出せぬ立場弱き囚人の代理を引き受けたあの運び屋>>20>>21>>22も、ここに来て未だ姿を見ていない。
それに、バレンスも――ハリコの認識の中では未だ、決して脱獄なんかに手を貸しそうに思えないその人も。
そんな彼女は本土とは別の地>>2:282>>2:283に居た訳だが、それはあずかり知らぬこと!
あの監獄には、非道な看守も外道な囚人も多くいたけれども。一見悪そうに見えなくて、けれど(結果的に拷問と化した長話で)頭を蝕んだ男の看守も、ひどく意地悪で嘲笑的で銃口を抜くのも早かった、けれど手紙を預かりはした、あの女の看守も。]