[ところでオクリビは、この“正直者”の実年齢についてはっきり知っている訳では無い。
目視した範囲での彼の容貌から、経験的に「40歳前後」と判断したらしい。基準については「レイちゃん15歳」と「カサブランカのフアナさん」と「製造元のシンギュラリティ」に聞いてほしい。
「ちゃんと笑うんだな」>>2:192という男の言に、オクリビは無言の笑みで肯定を示した。
己の機体の感情の無さに触れなかったのは情報秘匿の意図というより、単にこの場で言う必要がなかったから。
この女も「笑う」という行動は取れるのだ――「笑える」、だったなら微妙なところだったが。
一方の女の電子の脳も、この“正直者”の囁いた言葉>>2:-1>>2:-2に、少しだけ都合のいい解釈を加えていた。
「生きてていいんじゃ」をそのまま認識>>2:26していながら、「ないんだろ」を「ない」と訳してしまう>>2:-12、ささやかな不具合。
けれどもそんな(オクリビ自身も検知できなかった)不具合は、それでも己の道を歩む女の支えとなっている。]