[そして白薔薇はツバサ様によく似た長い指先で、カラスがくちばしでミカンをつつくように、おみかんの皮をがんばってつついて破壊しました。
(※さすがに本物のツバサ様はこんなおみかんの剥き方はしないでしょう)]
甘酸っぱい。
動物たちはこういうものを摂っているんだな。
[白薔薇はバラ科の植物として生きていましたが、バラに宿る樹霊でもあり、この地球上にひそかに住まう不思議な精霊の一端です。
そしてこの白薔薇は、原種のバラから品種改良を重ねて作り出された、人間という存在に代々近い場所にいた生き物です。
だからこうしてホモ・サピエンスの――あの女の子の心の中に描かれていた――姿を取った時にも、なんとなく、その動物種のような感覚や動作を何の疑問もなく取ることはできました。
それでも白薔薇はおみかんの身を口の中に入れた時に、あらためて、このような感覚を声に出したのです。]