[小声で「ウィルもご挨拶して」と言いながら
手元のランタンを軽く指で叩いてやれば、
中の火がくるりと踊って答えを返す。
心なしかいつもより楽し気な波長が伝わってきた。
魔法の火同士、この子も
ダアトさんのランタンが好きなのだろう。
はじめてご自宅前でそれを見た時に気が付いて、
以来毎年見に行くようになったのだった。
もちろん自分が見ていて楽しいのもあるけど。
そんな秋の散歩中、家主が庭仕事中だったなら
軽く声をかけて行くくらい、あたしにとって彼は
気安い魔法使いの一人だ。
大魔法使いにしては、だけど。
というのも以前お世話になったことがあったので――]