[──さて。敵と直接触れ合って戦うことがない男にとって、そうやって相手と間近で命のやりとりをする人間がどんなふうに警戒をするのか、いまいちわかっていない。所詮、元は軍医。命のやりとりをする相手は、患者だけ。今も、後方で目に入った動くものを自分は安全な場所で殺すだけ。だから、人工知能が相手の緊張数値の上昇を告知したとき、はて?と呑気に内心で小首を傾げていた。]