回想・フローラ
(花なんて、売れるのか?)
[正直に言えば、それが第一の感想だった。
孤児院の出の、自分よりまだ年下の少女がこの村で生きていく術としては、なんだかとてもふわふわして頼りなく思えた。
この村は、ただでさえ山奥にあるのに、そんなに花が売れるもんだろうか。その上、その花は一から育てるのだという。
それも、整備された花畑でもない、荒れた岩がごろごろしている土地を耕して
>>70。
当然、そんなものはあまりに無謀で、岩をコツコツ割るよりよっぽどきつい仕事に思えた。
見かねて仕事が終わってからのちょっとのつもりで手伝いはしたものの、すぐに音を上げるんだろうと思ったが、思いのほか彼女は意志が強かったらしく、結局最後まで手伝ってしまった。
本当は面倒くさいという顔もした…彼女に見えるようにはしなかったというだけだ。ただ、乗り掛かった舟だから、結局石を組んで花壇を作るところまでは一緒にやった。売り物の石は使えないから、それも難儀な作業ではあったのだが…]