[それだけだった。
結月の瞳から涙が流れることはもうなかったし、
鼻を赤くしたり、声を震わせることもなかった。
一粒の方が間違いであったとでもいうように、結月は相手を見る。]
ごめんなさい、
[まだパフォーマンス中なのだ。
立ち止まる訳にはいかないと、
肺に溜まった息を吐き出しながら謝罪を告げる。
相手が避けてくれたとしても邪魔をしたのは事実だ。]
……通ります。
[まっすぐ見据えた瞳は、横をすり抜けるために逸れる。
結月の身体は人の合間を縫うのに向いていた。
先程より慎重に、けれど強くはない足取りでその場を離れる。]