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[異変に気付いてか、戻って来た子犬が足元で心配そうに鼻を鳴らしていました。
パップさんを慎重な方だと評していたヘロンさんの声が脳裏に過ります。>>40
話しぶりから、迫害を受けていたという存在に対して、理解があるようにも感じられました。
だからきっと、寧ろ私のほうが必要以上に恐れているのでしょう。
心が見透かされているような気がするのだって、ヘロンさんからは確たることは何も言われてませんでした。
けれど、それが錯覚かもしれないと自分にとって都合の良い思考に逃げようとすればするほど、そうではないと確信していきました。
私は背を向けたまま、何もなければ、意を決して歩き出そうと、そして、秘めた気持ちを抑えるように、傘を持つ手に力を籠めました。>>76]**