[小さな手が頭にかかる。指が髪の隙間に沈んで、何かをひっかけるように横へ引っ張った。髪が、ほどける。片側だけが結ばれた歪な形。左手が追いかけるように右へ倣う。結んだ跡の残る明るい色が背中で揺れる。] ――。[振り向いて、部屋の中を眺めた。横顔をくすぐる髪をわずらわしそうに耳へかける。視線はどこにでもある利用者用のテーブルへ向いていた。カメラが示した行き先は、何てことないひとつの席>>74だった。]*