ああ、特別な医療が必要なことがわかって…
こちらで対応できるかわからないし、治療に専念したいという気持ちが…
[職員に、よれよれになるまで読んだリーフレットの入居の際の注意事項のところに書いてあったことを思い出しながら読み上げる。
なんやかんやで手続きは1時間程度で終わり、ホームの相談室を出た。
やれやれ、これで清々と帰ることができる…
と、顔を上げたとき、少し離れた場所に見えたのは、あの行きの船で見たことがある老人の姿だった。
彼とは船では、食堂にいる時に軽い挨拶を交わした程度の仲だ。
だが、彼もここに入居に来たのだろうか?
つい、声をかけるという気もないが、彼の方へと歩みを進めた。]**