― 後日 ―
[高層ビル群が見下ろす屋台のビニールシート。
その屋台を囲む椅子から少しだけ離れたところで、
ヴィブラトは携帯端末のスピーカーに囁き声を載せていた。]
ダメだと言っただろうカレン。
いくら何でも実の娘から……、それを貰うというのは。
「パパはまたそう言って痩せ我慢する。ケーキは食べた癖に」
っ、カレンお前、その話はもう……
「ごめんごめん、つい。……クマちゃんケーキ食べたかったな。
でもさ、わたしだっていつもそっちに行ける訳じゃないんだから
行ける時くらい、パパに「おやこうこう」っていうのさせてよ」
[この時は既に出国していたカレンからの供血の申し出に、
その父親は眉を思い切りしかめながら、
周囲に会話を聞き拾われてもいいように言葉を選ぶ。]