[そうして翌日、昼食時刻の少し前。
人気が失せたタイミングで、その看守さんは現れた。
初めて見る彼の顔に少し首を傾げながらも、差し出された小さな品を受け取って。]
まあ、わたしに?
……嬉しい
[贈り物はリップスティック。>>59
キャップを開ければ艶やかな淡い桃色が光って、暫くの間うっとりとそれを眺めていた。
すっかり縁が切れて居た自身を飾る道具に心奪われながらも、誰からのプレゼントなのかを問えば、看守は地下階層の区域名を告げる。
送り主の名を教えても分からないと判断したのか、それとも名を口にする行為さえ恐れ多いと思ったのか。
詳細は不明だが、自分にとってはそれで十分だった。]