[ありがとう、先生。……おかあさんたちには、しーだよ。びっくりさせるんだから。 ごめんなさい、事前に刺繍を入れていいか確認を取るために言ってしまったのは秘密にしつつ。 花屋の彼女と別れた後に、小さなトランクケースに折り畳んで入れていた洋服を子どもに手渡す。大人のように着てみたいと学校があった前々日の放課後まで一生懸命その洋服に刺繍を施していたが、間に合わずに託されていたのだ。そうして帰路に着かんとする最中、自宅への道とは逸れて立ち寄ったのは学校だった。]