先輩は、『今月お勧めの本』は置かないんですか?
[言いながら、借りられます?という言葉に頷いて途中まで読んでいた本を差し出す。]
…本になっているからには、沢山の人がこの物語をいい話だと思っているんだと思います。
でも、この学校っていう狭い範囲にも、自分と、誰かが、同じ本を読んで同じく面白いと思う感性を共有しているっていうの、嬉しいし…何だかほっとします。
[言った後、ほっとするのは、もしかしたら自分くらいかもしれない、と思った。
同時に、見も知らぬ他人の感じることが分かった気になっているだけかもしれない、とも思った。
…そういうことを、考えすぎるから駄目なのだ。
他人のことなど気にしない、相手にしない。
髪色だってそんな気合を入れるために変えたのに、考え込むのはよくない。]