[「国民」についての問いに、この「国民第一号」は口角を僅かに上げ、それから眉を軽く下げてみせた。
苦笑の形ながらも笑ったのは、ヌルの耳にきちんと「穴掘り帝国」のことが(そしてオクリビがそこにいることも)届いていると判ったからだ。そのヌルが既に「女王」としてのズィーに直接会っていたことまでは知らなかったが。]
今のところはさっぱりね。
この抗争の間に勧誘はだいぶ行ってきたから、
これからその成果が出てくればいいのだけれど。
[武装は解かねど臨戦態勢でもない気楽なオクリビは、フードについた新たな赤紫色のタグを、さりげなく己の左手で指し示す。]
ねえヌル、貴女も「国民」にならない?
……なんてね。
貴女がそういう子じゃないのは解ってるわ。
[リリオに身を寄せることもなければ、他の組織に与することもない「葬儀屋」。
彼女がかの「ヘルハウンド」の生き残りだという話も特に聞いていない女は、あくまで「何にも与さない」在り方の少女を思いながら、苦笑いを保ってみせるのだ。*]