─最終日─
[最終日も変わらぬ一日を過ごします。
朝起きて、ご飯を食べて。本を読んで。お昼を取って。
それからふらりとお店などを見て回ります。
お土産を買う相手もいなければ、旅の荷物を増やすつもりもないのですが、そうですね、今まで余り見て回らなかった、というのもあって、最後の機会でしたから。
ふと小物屋の店先で足を止めて、わたしはお土産品に目を奪われました。
淡いブルーのハンカチに、白い花の刺繍が施されています。ひとつひとつ人間の手で縫ったものなんですよと店主は教えてくれました。
…いえ、わたしが見ているのはハンカチの精巧さとか、人間の手を介した珍しさではないのです。
それは白くて小さい花でした。わたしはその花の名前をよく知っています。
………………ジャスミン。わたしが遺してきた、わたしの、名前。>>0:37 **]