—当日:広場—
[普段一つに結んでいる黒髪は下ろし勿忘草の髪飾りを付けて、濃紺のワンピースをひらめかせながら村の中心部へと赴いていく。何時ものトランクケースは、今日はお留守番だ。
賑わう広場では屋台に立ち並ぶ親子———子どもたちもちらほらと見られ、その度に挨拶を交わす。中には昨日渡した洋服を着ている子どももいてその満足そうな表情に、此方も嬉しくなる。あの後ろ姿は……だなんて、時には見知った二人が連れ添う姿にくすりと笑みが零しながら歩みを進めつつ。
そうやって、自分なりにお祭りを楽しんでいる最中に、ふと呼び止める声。>>53
待ち望んだその声に、くるりと後ろを振り向いた。]
いえ、だいじょう………