[烏藤 柊平は、大学進学を機に故郷を離れ、演劇青年として過ごし、現在は劇団螢雪に所属していた。
出身者にはテレビや映画で活躍している俳優が数名いる、歴史もそこそこに長い劇団だ。
彼の活動の多くは劇団での公演で、まだメイン配役には入らないものの、三枚目のお調子者から病弱な青年、二重人格者まで幅広く演じている。
テレビや映画での露出は少ないが、事件の被害者役や連ドラの単発話に何度か出演経験があった。
その中で印象的な役といえば、ヒロインに募る思いを拗らせたストーカー役。
勿論、害を及ぼす前に取り押さえられるのだが、もがきながら血走った目でヒロインの名前を叫ぶ姿は真に迫ったものだった。
それは烏藤の以前に演じた二重人格者役を見た演出家のオファーによるもの。*]