此処から随分と離れた場所、———それこそ 王都よりも遠い砂の覆うオアシス。
昔はその、少しばかりお金を持っている場所で生まれ育ったんです。
貴族、と呼ばれていたのですが。
[幼少期から、社交界に出る為のある程度の教養を叩き込まれる日々。
ダンスの身のこなしから生活での振舞い、言葉回しなど細かい所作から一つずつ日中教わる中で 屋敷に飾られていた絵画の数々を眺めることが唯一の憩いだった。そこから、絵画を自分でも描いてみたいと筆を持ち始めるようになったのは必然で。]
だからこそ、趣味に———様々な絵画を描くことに父から様々な道具を買って貰っては、先生≠付けてもらったりと。
そうやって本格的に絵を始めたら、更にのめり込んでしまって。
何時か、この趣味を仕事にして 色んな世界を旅して、その土地の絵を描きたいと思うようになったんです。
……今思えば、不自由ない環境だったからこそそう願えたのですが。
[薄ら笑いを浮かべたまま 周囲と馴染んでいくためのお茶会よりも、一面に広がる砂漠と空の境目を描いた一枚の絵の方が私にとってはとても価値のあるものだったから。本の中で読んだ、今いる場所とは異なる景色が広がっている様を想像しては、霧散していく日々。それを形にしたいという、願いを募らせて。でも。]