私は、兼平理音の白薔薇だった。
今は兼平昴の白薔薇と言うべきではあるが……。
理音の名の方が、先輩はよく知っているだろう。
[「どこの」白薔薇かという問いには正直に、今の持ち主である弟の名のほうも付け加えてはいました。>>91
とはいえこの後も「先輩」が理音のことを「兼平」と呼ぶのが聞こえれば、彼にとってはあくまで理音が「兼平」なのだろう、と白薔薇は考えます。>>92
その兼平理音の思いを――白薔薇が枯れた後の元の持ち主の想いを、白薔薇はここで初めてはっきりと知ることになりました。]
そうか。
あの子は本当に、私の死を、悲しんだ。
本当に、苦しい思いをしていたんだな。
[返す声こそ落ち着いた調子のままではありましたが、まだ自責が白薔薇にはありましたから、ここで理音について「悲しんでくれた」とは言いません。
そしてそんな理音に対して「先輩」が働きかけてくれていたこと、その後の彼女の調子のこと。鬱憤晴らしの北海道旅行のこと。……多分行けないだろう、ということ。>>93
ひとつひとつの話に、白薔薇は、まるで人間が行うように相槌を打っていました。]