>>111 ウロボロス
[だんだんと日が暮れる。暗い部屋、お互いに目すら合わせず交わす約束はどこか浮ついていて現実感を薄れさせた。
まだ夢の中にでもいるような落ち着かなさと浮遊感、そして後ろめたい高揚が、この男の唇と舌を動かして声帯を震わせて『はい』を言わせた。
彼が腕を組む衣擦れの音がやけに響く。]
……いますぐは駄目ですか。
少し採血させて頂けたら……すぐ終わるので。
[ほんとうなら、いつもの自分なら。
何を差し出すことになるのかをはっきりと確かめてから諾否を決める。そうするべきだと、よく分かっているのに。]