>>52ズっちゃん
[浮浪者は、黙々と片付いてゆくあなたの仕事を、それまでと打って変わって静かに眺めていたでしょう。
真っ赤なエプロンが、桶へと血を流すように浄化されゆく姿。色とりどりの衣類が、流れ星のように大切に1つ1つ泡に染められてゆく過程。あなたの手際の良さに感心しつつ、絵画のようだと感銘を受けたからかもしれません。ダメで元々問いかけて、OKが出たならシャッターを切ろうとして。]
……。まーそーだよねぇ。
[いつもと変わらないその沈黙を、拒否と捉えてカメラを下ろそうとした時だったでしょうか。]
……え?……今…
[ぱしゃり。と驚いた男によってカメラが翡翠色に瞬いたのは。]
え、嘘、え?!
ズっちゃん、まさかこれのこと知ってるの?!
[タラッシリアにおいて、男の画材道具は奇異なものでした。多くの人は畏怖、驚愕、興味…など感想は抱いても『絵を描く道具』であることを疑うものはいたことがありませんでした。]
写真を知ってるの?何処でみたの?同じものをタラッシリアで?それともズっちゃんの出身地とか―――
[珍しく歓喜の表情を浮かべた男は、掴み掛かるような勢いで矢継ぎ早に質問を投げながら、ひらり舞った写真には目もくれず、タライのそばまで近づいて行ったでしょう。]