[そのクシャクシャの包みが頭にあたると、小さくかつん!という音がしたことに道化師はすぐ気づくだろう。
包みの下にあるのは、化粧用の白粉やパフ、コンパクトなマスカラだ。
男は非常に事なかれ主義なやつだった。
看守や他の囚人たちに体良く使われることも多いが、何かを知らん顔して渡すのは得意な部類。この化粧道具も、何回か持ち主の手を入れ替えて、最後に男のもとに辿り着いたものだった。
入り口近くにずっといるのが都合がいいのだろう。
やたらとそういう頼まれごとをされる。
…看守たちの見ていないところで、
秘密裏にできた囚人間の流通と情報網。
妙な動きをしたら潰されるが、密やかにするぶんには…時折看守たちにも利益をもたらすこの物々交換のネットワークは、小さく糸を張っている**]