回想・偵察兵と
[どうして、と目の前の患者の口が動いた
>>92。声が出た。
その先に続いた問い
>>94に、男は僅かに目を伏せる。]
おれが医者で、その医者の手は、
死から命を掬い上げるためについてるからだ。
[はたして、納得のいく返事だったのかはわからないけれど。
もしかしたら、死にたかったクチだろうか。だけど、我々は「このまま殺してくれ」と泣きつかれても、生きろと命を掬いたがる性を持った者ばかりだ。
男も、そう。
どんなに殺してくれと泣き喚かれても、死にたかったと落胆されても。
いきろ、と生を押し付けるのだ。そのための、眼。]