[ひとつ。 かつてフアナの名を与えられ、今オクリビを名乗るこの女には、「感情」らしい感情の発露が起こらない。 これは彼女の元々の人格ではなく、機体性能の問題によるもの。 機体の損傷情報をCPUに送る「痛覚」や反射的な回避反応程度は実装されているが、いわゆる生身の人間じみた苦痛や恐怖の再現という訳ではない。 譬えその機械の眼球や口腔の外装が潤って見えようとも、実際に涙や唾などに相当する液体を零すこともないのだ。 それから、もうひとつ――]