今の私の気掛かりは……「あなたしかいない」。
理音と同じ曲を奏でた君のことを、
放っておくことは、私にはできないよ。
[……心配しなくていいとばかりに笑う「先輩」に無理に正直な話をさせようなんて心算は、白薔薇にはなかった筈です。>>95
それでも音なく降り積もる雪のように微かに問いを重ねたのは、目の前の人もまた理音にとって大切な存在だったと思ったからでした。
白薔薇の死を受けた彼女を支えてくれた「仲間」であるのなら、なおのこと、と。
理音の心に触れて得たあの『あなたしかいない』の記憶を辿りながら、白薔薇はいまいちど、「先輩」の両目を覗き込もうと、ツバサ様とおなじ緑色の両目を向けるのです。**]