― 始業式の後 ―[青年が職員室での説教から解放され、ようやく2年A組の教室に顔を出せた時>>117そこにはまだ誰か残っていただろうか。] ……帰んなよ。[眼鏡姿の彼がまだ背を丸めていたのなら、ぶっきらぼうに声をかける。もう終わっているよ、と付け加えればよかったのだがどうしても言葉が足りない。いかにも大人しそうな青年だ。朗読を専門とする彼は校内アナウンスにその声を響かせたことはあったのだろうか。なければ、きっと彼への印象は朧。*]