― 夏休み/図書室 ―
[細く開けた窓から生温い風が吹きこむ。
夏の日差しが柔らかな黄色をしたカーテンを透かした。
顔を上げた結月は窓の方を見て、
外が見えないことを思い出したのか、視線を戻す。
塾と自宅、それから時々友人宅。
それが受験生である結月の基本的な行動範囲であった。
予想通り全く遊べない事態にはならなかったけど、>>1:74
予想よりも勉強に追われている。
追われているというか、予定が合わないというか。
夏休みに入る前からその気配はあったので、
結月は変わらず週に二回、図書室の担当を請け負った。
三年生だからと後輩が代わりを名乗り出たが、
結月は大丈夫だと言って頑として譲らなかった。]