[明くる日。
相変わらずの薄明の空の下、道を照らすランタンも持たずに発着場へと向かう。
旅客が出入りするセンターの前で人を探す素振りのその人>>71>>72を、シェルタンの目ははっきりと捉えた。
群青色の薄明の光に照らされるリボンの色は、緑。
遠い日の記憶にも最近の記憶にもある色と、おなじ緑。]
アルレシャ!
[駆け足で近づくにつれ、さらにくっきりと映るその人の容貌。
最後に顔を合わせてからの年月の経過もあれど、その人の面影は記憶の中の笑顔と違わない。
シェルタンの容貌もあれからあまり変化していないが、左の額には傷跡が増えていたから――。
あの日送られた緑のリボンを、「シェルタン」である証のように、己の左の手首に巻き付けていた。]