[宿主の記憶が零させた悔悟を、けれど“ 演者 ”はすぐに止める。
彼女が会いに来た相手は、他ならぬ“ 貴方 ”なのだから、と。]
初めまして、アルレシャ。……さん。
[涙に濡れた目のまま笑ってみせたが、「さん」と敬称を言い添える口調はどこかぎこちない。
少しだけばつ悪そうに目を逸らしてから、もう一度アルレシャを真っすぐに見つめて]
僕のことは、そうだな――。
「フルト」でも別にいいんだけれど……。
[余談だが、文学資料館の職員としての「フルト」の筆名は使い続ける心算でいた。
大々的に復帰宣言をした手前、「シェルタン」の名を文学資料館から出すことは、失踪時とはまた違う形で騒ぎの元になりかねない!]