[それから此方の用件を問われ>>111、「そうそう」と呟きながら(別に葬送のことではない)、腰のポーチに手を伸ばす。
中から取り出したのは、金属の上に布地を張って作られたくるみブローチ。
淡い空の青に染められた布地には、赤い目の黒犬と、その傍に佇む白い天使とが、素朴な刺繍で描かれている。]
大分前の話なんだけどね。
「表側」の子から、貴女にこのお守りをあげてって
頼まれたことがあったのよ。
「葬儀屋のぬーちゃん」、なんて言ってたし、
多分、都市伝説程度の話しか知らないと思うけれど。
[ブローチを差し出しながら、今度はちらと黒犬――グリムの方を一瞥する。
残念ながら、素朴な刺繍の中の犬には「本物」程の迫力はなく、義足も再現されてはいなかったが。]
噂の中で気味悪がられる貴女のことを、
それでもその子は「優しい人」だと思ったんだって。
――『ありがと』、っていうのがその子からの伝言よ。