[アルレシャが零した涙を前に、シェルタンの心臓がとくりと強く鳴る。 目の前のひとの涙に、己の内の鼓動に、“ 演者 ”は戸惑いを覚えるも――] だから、大丈夫。 僕はもう……ううん、あいつと違って、 勝手にあなたを置いていったりしません。[宿主と“ 演者 ”がない交ぜになった言葉と共に、屈託なく笑ってみせる。 恋人でもない自分(カラス)に、アルレシャを抱きしめる権利があるのか。 そんな戸惑いに反して、シェルタンの両腕は――左手首に緑のリボンを巻いたまま――目の前のひとをだきしめようと動いていた。]