[オクリビの手に伝わったであろう手応えは、人の肉を引き裂く感触だったはずだ。
彼女の手がそれを感じることができるのではあれば、だが。
フットマンは胸元から逸らしたカタナから手早く左の掌を引き抜くと、距離を取ろうとオクリビの腹部を思い切り蹴飛ばした。──尤も、人間の脚力で機械仕掛けの彼女を吹っ飛ばすことができたかどうか、わからないけれど。
できなくとも、フットマン自身が彼女を足場に、大きく後方へ飛び退いただろう。
オクリビと距離を取って、フットマンは自身の掌をチラリと見る。
厚いはずのグローブを引き裂いて、その下にある肌に到達し、穿たれた穴からぼたぼたと鮮血を地面に散らしている。グローブの向こう側を貫いていないのが幸いか。]