…
[黙って絵本を捲る。
その時、絵本の上に鳥の影が走って顔を上げた。
窓の外を見ると、まだ全く咲いていない桜の木の枝に、雀が2、3匹とまっているのが見えた。
そういえば、と思い出す。
以前、あのあたりから幸阪先輩が何かを見ていたことがあった。
一体何が見えるんだろう。
絵本を机の上に置いたまま、窓の方へと向かう。
そして、温かな日差しの中、手すりに手を置きつつ、窓の外を、先輩の見ていた方を見た。]
花。
[そこから見えたのは、校舎前の花壇だった。
一部には既に小さな花をつけている苗が植えられている。
あれは、パンジーだろうか。]