先生の家には、なかったな。
[まだ枝しかない桜の木を見る。
この木にも、きっとしばらくすれば、あの嵐のような勢いの桜の絵のごとく、一斉に淡いピンクの花達が咲き始めるだろう。
けど、先生の家には、なかった。
あの小さな美しい花々の咲き乱れる庭には、もう二度と足を踏み入れることはない。
自分はこうやって、先生とわたしだけがいたあの庭とは全く違う景色と花々に囲まれてこれから先を生きていく。]
いいじゃん。
花、綺麗だし。
[もう一度、寒空の下小さく花をつけているパンジーを見た。
きっと、春になればもっとたくさんの花が付くだろう。
まだ空いている花壇にも、多くの苗が植えられ、花をつけるに違いない。]