[くしゃりと音が聞こえた。
カメラは結月の小さな手を捉える。
クロッキー帳の上に乗せた指が強くページを掴んでいた。
指の隙間から見える黒い線はよれた分だけ歪んでいる。]
……っ、はぁ。
[苛立ち混じりの吐息が結月の口から零れた。
背後では他の生徒たちが明るく語り合う声が聞こえる。
同じ場所、同じ時間を過ごしているはずなのに
画面の中で二組の温度は大きく違って見えた。]
――ふう。
[結月は深く息を吸う。
誰にも気づかれないように丸まっていた背を伸ばす。
小柄な体躯の背中はそれでも頼りなくて、
どこか心細いような印象を受けるだろう。]