― 街中:どこか ―
[どれほど走ったか。
追手があれば器用に撒いて、他陣営の者に出くわせば戦闘を避け逃走する。
幸い赤い外套を着こんでいた事もあってか、遠目から見る分には自分の出血はあまり目立ったものでは無い。
多少服が泥で汚れている……、認識としてはそれぐらいであろう。
口元を汚す赤をズタズタになった人工皮膚の手で乱暴に拭って、壁にもたれ掛かり先ずは一息。
その後もたれ掛かったまま、ズルズルとゆっくり歩を進める。
何処かで傷をふさぐ、もしくは応急手当をすべきだ。派手に穴の開いた腹部を一瞥、再び歩き出す。
壁に赤い跡が残ったが、今は気にしている場合ではない。
壁に手をつけば、真っ赤な手形がそこに張り付く。
痕跡を残し過ぎるのは頂けない。
壁から離れると人気のない建物の一角に入り込み座り込むと、応急手当を行う為、上半身の服を引き上げる。]