―始業式の後―
[担任の教師の話が終わった後、クラスメート達は次々に鞄を持って教室を出ていく。
教室の全景からフォーカスの当たった少年は、ちらりと空いたままの席に視線をやった。
友人らしき生徒が鞄を持っていくところでも見たなら、少年も教室を出ていただろうが、そのままだったのが気になって残っていた。
交友関係が狭いと、大事な知らせを聞き漏らす事もある。
幸い、今日は言伝るような事もなかったのが幸いだが。
手元に広げているのは朗読用の原稿。
少し矯正されたものの、癖になった猫背で一心に文字を追っていた。]
……っあ、え、えっと……。
[>>118声を掛けられ、少年は弾かれたように顔を上げた。
そうして声の主が自分とはタイプの違う生徒──先程は姿が見えなかった生徒だと認識する。]