[美濃が誘いをかける場面で視点が変わり、
彼女の顔を真正面から捉えた。
続けて対となる結月が映し出される。
近づけば、ファイルの中に封筒が入っているのが見えた。]
……っ、
[二人の間を隔てるように、夏の生温い風が通り抜けていく。
風は美濃の髪だけでなく結月の高く結んだ髪も揺らして、
ひとときの間、少女の顔を隠した。
掲示板のプリントが落ち着く頃、結月は顔を上げる。
小柄な彼女が誰かと目を合わせるにはそうするしかない。]
先輩。
わたし――美術部やめるんです。
[静かな声だった。瞳は相反して熱かった。
睨むようであったし、泣くのを堪えているようだった。
風は吹かない。誰も、何も、結月の姿を隠してくれない。]