[公爵の子供が、孫がどんな人物なのか。
あの事件が起こるまで自分は気にした事は無かったし、既に死んだ命に対しても同じ事。
けれど蘇った愛らしい人形は別であった。>>74>>75
抗争が落ち着くまでの素性は孤児とされた物の、ヒトとの関係性と言う物は簡単に、完全に切れるような物では無い。
一度見た顔、知った顔であれば猶更。
諸々の内情を口外することは禁じられていたが、彼女が働く店が中央表通りにある以上、どうしても何処かで顔を合わせる機会がある。
表面上は店員と客。
内情は上司の孫と、上司の部下。
宿を取る事は無かったが、食事の頻度はそれなりと。>>76>>77>>79
味も良いし、すっかり気に入りの店となった夜雀亭に通い、そこで働くアリシアの様子は後で公爵に報告する。
とはいえ、余程普段と変わった事が無ければ報告内容はいつも同じ物であるし、彼女との距離を常連客以上と詰める気もまるで無い。
無論、彼女の方から要件があるなら、話は別であるのだが。
一先ずの関係はそんな所か。
裏と表の境界線、赤い男は静かに佇む。**]