[何故だか薬学の知識だけはすっと頭に入った。
だけど魔術の才能はさっぱり伸びなくて。
ある月夜の晩に恨めしそうに向こう岸を眺めてた。
そしたらそこに船が通ったんだ。
……煤けた巨大な客船。>>56
船長はオランダ人かな。いや、違うか。誰もいない…?]
そこの船、停まって…!
[その時の俺は切羽詰まってた。
例えそれが地獄の渡し守だって良いと思ったんだ。
その時の俺は人間でいえば中坊位の姿だったかな。
人間界には厨二病というのがあるんだってな。
そんなお年頃だったのさ。
その時その船が停まって向こう岸に渡してくれたなら…
それが記念すべき旅の始まりになっただろうな。]