――――回想:孤児[ この国において孤児という存在は珍しくはない。 少なくとも、私の見識の範囲では、だ。 故に、その日も遠征任務で臨時診察をしていた私は ひどい熱病に侵された男児に対し 親の所在を尋ねることは一切しなかった。 ] 君。ああ、何も喋らなくていい ……一人で歩けるならそこのベッドで寝ていろ[ 小さな手に握り締められた硬貨には気付いていた。 それがその子の、なけなしの生きる糧ということもだ。 大人さえ金を稼ぐことが難しいこの国で 少年が、少額でも金を稼いだのは、感嘆に値した ]