『───』
[紡がれる音、凡そ言語とは呼べぬそれを発しながら少女は手に持った写真を僕に見せながら笑みを零す。
彼女は、先天的に五感の一部が著しく弱い特殊体質と聞いた。
先祖返りによって色濃く出た魔法使いの血が、彼女の身体を拒絶しているそうだけど、詳しい事は僕には分からない。
ただ、その事で彼女は世界から不自由を強いられている筈なのに、不満どころかこうして浮かべる笑顔は心の底からの喜びで。
純真、というか。
僕にはないその輝きは、とても魅力的に映ってしまい。
思わずシャッターを切った時は流石に怒られたけど。
僕の代表作『存在』の主な被写体は彼女だ。
そして僕はこの作品を最後に、肖像写真家から風景写真家へと転向する事になる。
ニュースでは才能の持ち腐れだの、そのチャレンジ精神を称えたいだのと言いたい放題だったけどね。
単純な話でさ、ただ僕が肖像写真を撮れなくなっただけ。 ]