だってあなた――私を縛るつもりなんて無いんでしょ?
[浮かべた笑顔はどのようなものだったか。もしかすると、幼い少女には似つかわしくない獰猛な笑みだっただろうか。それを目にするのは眼前にいる男唯一人であり、彼以外にそれを確かめるすべはない。
私が従ってもいい。女王になろうと公女になろうと構わない。
逃げてもいい。何なら彼を倒して夜の女王と事を構えてもいい。
行きつく先は一緒で、私に待っているのは争いへの道。だけどその「争い方」は君が選べ、とこの男は確かに言っている。
もちろん、断る選択肢は元より無いに等しい。だがその手を潰さぬよう取ろうという直前、その瞳の奥のどん底の暗さを垣間見る。
その瞳は先ほどよりは怖く感じなかった。
これから始まるのは、わたしの生きる美しい街を守るための戦いだ。
ただ全ての悪を滅ぼすだけで、出来る事なら何も起こらないでほしかった。
だというのに、この奇妙な高揚感は、一体──"何"だろうか。*]