[ 少年は、ここが軍医の派遣先と知って来たのか。 或いは渡りに船だと飛び込んできただけなのか。 ただ、その掌の硬貨が、少年の全てのように見えた。 この子は未だ腐っていない。 生きるために金を稼ぎ、生きるためにここへ来ている。 私の目に映った世界は、それだけだ。 けれどもそれで十分だった。 ] …………運が良いな、少年 ちょうど"薬が一つだけ余っていた"ところだ[ 不安なく口に出来る飲み水さえ、恐らくは この子にとっては、貴重だったのかもしれない。 ]