[先輩、と言いかけてその表情を見る。今までに見たこともない先輩の顔がひとつ。その表情は、嫌そうな…怒っているような…悲しんでいるような…悔しがっているような… 分からない。少なくともボクに見せたこともない表情だ。
近くまで行って、声もかけずにステージのほうを振り返る。歌はどうやら一番盛り上がる部分に入っていたらしい。
―― それは、祈りだった。メロディにのせた言葉が紡ぐ祈りは、ボクにとっては”平和に対する祈り”であるかのように聞こえた。すべてのひとに安寧を、すべてのひとに平穏を。
・・・・・”すべてのひとに平等を” >>110
隣の先輩は何を思ってこの歌を聞いているのだろう。何も知らないボクは、何も察することはできないけれど。
ただ一つ前言撤回するなら、最初で最後なんかじゃない。またいつかボクが”平和に慣れることがあったなら”、その時はもう一度ちゃんと歌を聞いてみたい、そんなちいさな未来を夢見る。 **]